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2009年3月29日日曜日

医師の教育

初期臨床研修制度が変更となった。実質13カ月の研修だけで、2年目は専門研修に充てることができる。どうしてそのような変更がなされたのか。一説によれば、臨床研修制度が、医師不足を招き、地域医療崩壊を後押ししたからだという。全く意味不明である。その上さらに、そうしたことを言い出したのは、大学医学部の関係者であるらしい。これまで臨床教育を全くないがしろにしてきた大学が今頃何を言い出すのか。研修医に給料も出さず、研修もさせず、数を量産するだけの何の役に立つかわからない研究の下働きでこき使い、そして何より、医学生の教育という最大の仕事も、まともに取り組んで来なかった人が、いったい今頃になって騒ぎ出すというのはどういうことか。

厚生労働大臣も、厚生労働省も、そういうわけのわからない人たちのわけのわからない訴えをまともに聞いたりして、いったいどういうことだ。声の大きな人の言うことが一番重要ということか。訳がわからない。

医学部は文部科学省、卒後は厚生労働省というようなわけのわからない制度は、もういい加減やめにしてもらいたい。そして医学部の役割は、医学研究者の育成ではなく、臨床医の育成であると明確にしてもらいたい。貴重な医学部の学習の期間を、国家試験というような臨床実務とほとんど関係がないような勉強に費やすのも本当に馬鹿げている。

そういう中、唯一、臨床医の育成という明確な理念で始まった初期臨床研修制度は、多くの問題点も抱えながらではああるが、そうしたわけのわからない医師教育から、ようやく一歩抜け出す貴重な試みであった。ところが、どうだ。実際に起こったことは、大きな問題のあるところは放置され、問題解決のために始まった制度だけがいじくりまわされる。これはいったいどういうことか。

変えなくてはいけないのは、臨床研修制度ではない。大学医学部そのものであり、文部科学省、厚生労働省の2つが、別々に医学教育を進めていくことにある。大学医学部は、臨床医の育成もまず第一に考えなければいけない。医学の教育でなく、職業訓練をするというような大胆な発想の転換が必要である。ただ職業訓練だけでは、良い臨床医は育たない。幅広い教養教育が不可欠である。臨床医育成のための職業訓練と教養教育、これが大学医学部がとるべき道である。

また、文部科学省、厚生労働省は、医師の教育について、一つになって取り組めるような機構そのものの改革が必要である。

でもそんな風には当分進まないだろう。実際に起こっていることはそれと逆である。初期臨床研修制度の後退、大学院の大幅な定員増大、相変わらずの学生教育と卒後教育の分離。

医療崩壊はますます進むだろう。